【ご質問】
昨年、父が亡くなりました。
父の知人に税理士さんがおられましたので、その税理士さんに相続税の申告をお願いしました。
税理士さんという専門家にすべてお任せしましたので、言われるがままに相続税の申告と納税が終了しました。
よくよく考えてみると、母には配偶者控除があるので母が多く財産を相続して、その後私たち子供に生前贈与をすれば相続税や贈与税の節税になったのではないかと思うようになりました。
このような場合、相続税の申告の修正や遺産分割のやり直しはできるものなのでしょうか。
【税理士長嶋の回答】
遺産分割のやり直しは、できます。
また、相続税の申告のやり直しは、できる場合とできない場合があります。
ただ、遺産分割のやり直しをすると贈与税の問題が出てきますので、よく検討されることをお勧めします。
【遺産分割のやり直しはできる】
そもそも相続税は、相続した財産に対して課税されます。
財産を相続するということは、その大前提として遺産分割協議が成立しています。
遺産分割協議を成立させるために遺産分割協議書を作成し、実印の押印をされていると思います。
最高裁の判例において、共同相続人の全員が合意をすれば遺産分割のやり直しができることが示されています。
(最高裁判所平成2年9月27日判決)
共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることは、法律上、当然には妨げられるものではなく、上告人が主張する遺産分割協議の修正も、右のような共同相続人全員による遺産分割協議の合意解除と再分割協議を指すものと解される。
【遺産分割のやり直しをすると贈与税が課税される可能性がある】
遺産分割のやり直しをして取得した財産は、相続により取得したのではなく贈与により取得したものとされます。
そのため、相続税の修正申告ではなく、贈与税の申告が必要になります。
相続税法基本通達にて、次のように示されています。
(相続税法基本通達19の2-8)分割の意義
ただし、当初の分割により共同相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、同項に規定する分割により取得したものとはならないのであるから留意する。
なお、相続税の修正申告ができる場合ですが、当初に合意をした遺産分割が無効であるときです。
例えば、遺産分割協議書が偽造されておりご自身がその事実を知らないなどのケースです。
この場合には、贈与税は課税されません。
ご質問のケースでは、当てはまらないのではないかと思います。
【相続税のことをある程度知っておくことも大事】
当初の遺産分割協議書が作成された経緯が、税理士さんが次のお母様の相続(二次相続)までを考慮されたのか。
あるいは、単純に税理士さんの説明不足だったのかわかりませんが、遺産分割協議書に押印するかどうかの最終的な判断はご自身がされます。
全部お任せでは、ご自身が理想とする結果にならないこともありますので、今後のためにも相続税のことをある程度知っておくことも大事だと思います。