【ご質問】
相続税が改正され相続税の基礎控除が引き下げられたということを知りました。
この結果、我が家にも相続税がかかりそうです。
インターネットで調べていると、養子をして子供の数を増やせば相続税対策になることを知りました。
ここで質問させてください。
相続税対策のために私の妻と私の母の間で養子縁組をしようと考えています。
養子縁組をした場合、妻の実親が亡くなったときのことですが、妻と妻の実親との関係はどうなるのでしょうか。
遺産相続の権利は残るのでしょうか。
【税理士長嶋の回答】
奥様と実親との血縁関係が切れるわけではありませんので、遺産相続の権利も残ります。
【養子縁組には普通と特別の2種類がある】
養子縁組には、次の2つの種類があります。
(1)普通養子縁組
(2)特別養子縁組
(2)の特別養子縁組は、戸籍上の親子関係を完全に切ってしまう縁組です。
そのため、家庭裁判所で審判の請求をしなければならず、また養子になれるのは原則6歳未満とされています。
ご質問の場合、奥様の年齢から特別養子縁組はできないため、(1)の普通養子縁組による縁組しかできません。
(1)の普通養子縁組は、当事者が合意をすれば縁組をすることができます。
養子の年齢が15歳以上であれば実親の意思確認は必要ありません。
そのため、奥様とご相談者様のお母様との間で合意すれば縁組が成立します。
養子縁組が成立すれば戸籍上、親子関係となります。
【養子縁組をすることで相続税にどのように影響するのか?】
相続税対策に養子縁組をすることで、相続税にどのような影響があるのでしょうか?
具体的に次の4つの項目について養子縁組が影響し、相続税の節税効果が生まれます。
(1)相続税の基礎控除
(2)生命保険金の非課税
(3)死亡退職金の非課税
(4)相続税の総額
(1)相続税の基礎控除
相続税の基礎控除は、次の算式により計算します。
「5000万円+1000万円×法定相続人の数」
養子縁組をすることで、法定相続人の数が増えます。
法定相続人の数が増えれば基礎控除が増えるため、相続税の節税になるという理屈です。
なお、相続税の基礎控除は改正されることが決定し、平成27年1月1日以降に相続が開始したときは、次の算式となります。
「3000万円+600万円×法定相続人の数」
(2)生命保険金の非課税
相続人が死亡保険金を受け取ったとき、次の算式により計算した金額は非課税とされています。
「500万円×法定相続人の数」
養子縁組をすることで、法定相続人の数が増えます。
法定相続人の数が増えれば非課税となる金額が増えるため、相続税の節税になるという理屈です。
(3)死亡退職金の非課税
相続人が死亡退職金を受け取ったとき、次の算式により計算した金額は非課税とされています。
「500万円×法定相続人の数」
養子縁組をすることで、法定相続人の数が増えます。
法定相続人の数が増えれば非課税となる金額が増えるため、相続税の節税になるという理屈です。
(4)相続税の総額
相続税の総額を計算するときは、法定相続分により取得したものとして計算されます。
法定相続人が増えることで、課税される相続税率の引き下げ効果が見込まれます。
相続税の税率が下がることで、相続税が節税できることになります。
【相続税対策に養子縁組は本当に効果があるのか?】
相続税対策に養子縁組。
インターネットで検索すれば数多くの情報が出てきます。
養子縁組をすることで相続税の節税になりますが、デメリットはないのでしょうか。
デメリットを検討し、それ以上のメリットがあれば養子縁組を実行するという判断をすることができます。
ところが、なぜか養子縁組に対するデメリットを語る人間がいません。
養子縁組によるデメリットを実務で経験していないため、語ることができないのではないのでしょうか。
税理士長嶋が実際にご相談を受けた事例をご紹介したいと思います。