【ご相談】
昨年父が亡くなりました。
父の財産を調べてみると、相続税の基礎控除を少々超えていることがわかり、自分で相続税の申告書を作成しようと思っています。
ここで、相続税の申告書の記載の仕方について教えてください。
インターネットで調べたところ、普通預金を相続税の申告書に記載するときは「亡くなった日現在の残高」であることがわかりました。
父が亡くなったことを銀行に伝えてしまうと口座が凍結されてしまい、預金を引き出せなくなると叔父から聞かされていましたので、葬儀の費用や病院への入院費用の支払いなどを済ませた後、銀行に父が亡くなったことを伝えました。
この場合、相続税の申告書に記載するのは父が亡くなった日現在の残高なのでしょうか。
それとも、葬儀費用や入院費用などの支払いを済ませた後の残高を記載すればよいのでしょうか。
【税理士長嶋の回答】
お父様が亡くなられた日の普通預金の残高を相続税の申告書に記載することになります。
お父様が亡くなられた後に葬儀費用の支払いや病院への入院費用の支払いなどを済まされていますが、これらは債務となりますので、債務の欄に記載することになります。
結果として、葬儀費用の支払いや病院への入院費用を支払った後の普通預金残高に対して相続税が課税されることになります。
【預貯金は相続開始日現在の残高が相続税評価額】
相続税は、死亡した人の財産を相続や遺贈によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。
相続税が課税されるのは、亡くなった日現在の相続財産の時価とされており、これを相続税評価額といいます。
普通預金の相続税評価額は、お父様が亡くなった日現在の残高とされます。
このようなことから、普通預金を相続税の申告書へ記載する金額は、亡くなった日の残高となります。
【葬式費用や入院費用は債務として相続財産から控除できる】
相続税を計算するときは、被相続人であるお父様が残した借入金などの債務を相続財産から差し引くことができます。
相続財産から差し引くことができる財産は次の2つです。
(1)債務
(2)葬式費用
(1)債務
相続財産から差し引くことができる債務は、被相続人であるお父様が亡くなられたときに債務として確実であると認められるものです。
お父様の入院費用については、入院したからこそその費用について支払い義務がありますので、債務として確実であると認められるものです。
そのため、お父様が亡くなられた後に支払った入院費用は、相続税を計算する際には相続財産から控除することができます。
この入院費用は相続税の申告書に「債務」として記載することになります。
(2)葬式費用
葬式費用そのものはお父様が亡くなられた日において債務として確実なものとは認められません。
その理由は、お父様が亡くなられたことで生ずる費用であり、これは相続後に発生するものであって相続があった日において支払い義務がないためです。
しかしながら、日本では人が亡くなると葬儀を執り行うことが一般的であり、必ず発生する費用であることから、国民感情を考慮して相続税を計算するときには債務と同様に葬式費用を相続財産から控除することが認められていると考えられます。
この葬式費用も債務と同じく、相続税の申告書に「債務」として記載することになります。
【結果として葬儀費用・入院費用を支払った後の普通預金残高に相続税が課税される】
相続があった日の普通預金の残高から葬儀費用・入院費用を差し引いた金額に対して相続税が課税されます。
結果として、これらの費用を支払った後の普通預金残高に対して相続税が課税されることになります。
【相続税申告Q&A参考ブログ】
・相続税の申告書を作成する際の諸費用は控除できますか?(2016.05.14)