【ご質問】
老人ホームに寄付したときの相続税について教えてください。
私の祖母は、現在老人ホームで生活をしています。
この老人ホームの職員の方々はみなさんとても親切にしてくださっており、祖母も毎日楽しい日々を過ごしています。
先日、祖母から次のような相談を受けました。
「老人ホームにとてもお世話になっているので、自分の死後、財産の一部を老人ホームに寄付したいと思っている」
祖母の財産の一部を老人ホームに寄付するにはどのような手続きをすればよいでしょうか?
また、この寄付について相続税を計算するときはどのようにすればよいのでしょうか?
【税理士長嶋の回答】
老人ホーム(社会福祉法人)に寄付するには、遺言書の作成が必要です。
また、相続税を計算するときは、寄付した財産に対しては相続税が課税されない特例があります。
【老人ホームへの寄付は遺言書が必要】
相続は、人が死亡したことにより開始することになります。
このとき、財産を取得する権利があるのは、相続人となります。
つまり、相続人とは家族や親族のことです。
老人ホームは家族や親族ではありませんので、祖母様の財産を取得する権利はありません。
そのため、遺言書の作成が必要になります。
例えば、遺言書に「現金1000万円をあげます」と書いて初めて老人ホームは祖母様の財産を取得することができます。
【寄付した財産には相続税は課税されません】
老人ホーム(社会福祉法人)に相続財産を寄付したときは、その寄付した財産には相続税を課税しないという特例があります。
相続税が課税されない特例を受けるには、次の条件を満たさなければなりません。
(1)寄附した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること。
(2)相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
(3)寄附した先が国や地方公共団体又は教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人(独立行政法人や社会福祉法人など)であること。
また、相続税の申告書に、寄附又は支出した財産の明細書や一定の証明書類を添付することが必要となります。
詳しくは、国税庁のホームページに紹介されています。
相続財産を公益法人などに寄附したとき
http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4141.htm
【遺言書作成時に老人ホームと打ち合わせをしたほうがよい】
寄付した財産について相続税が課税されないためには、上記の3つの条件をクリアする必要があります。
(1)については、老人ホームは遺言書により財産を取得するため「遺贈」という条件をクリアすることができます。
(2)については、相続税の申告書の提出期限までに寄付をしなければなりません。
老人ホーム側も「突然寄付します」と言われても書類手続きなどの受け入れ準備があるため、事前に段取りをしておけば安心でしょう。
(3)については、そもそも今お世話になっている老人ホームが社会福祉法人などでなければ、寄付をしたとしても相続税が課税されてしまいます。
このようなことから、財産を寄付するときは遺言書を作成する際に老人ホームと打ち合わせをしたほうが良いでしょう。