【ご相談】
相続税の基礎控除について質問させてください。
先日、父が亡くなりました。
相続人は私一人です。
8年ほど前になりますが、父が所有する実家の土地を相続時精算課税制度により、生前贈与を受けました。
父の主だった資産は実家のみでしたので、その当時相続税の基礎控除が6000万円だったこともあり将来的に相続税もかからないとのことで、父の生前に実家の名義を私に変更しました。
その当時の土地の評価額は4000万円程度でしたので、贈与税の支払いを済ませました。
ところが、平成27年から相続税が改正され、相続税の基礎控除が3600万円となってしまいました。
相続時精算課税は、贈与税と相続税をまとめて一つとして考えると聞いたことがあります。
私は相続税の基礎控除が改正される前に実家の贈与を受けていますが、現在の相続税の基礎控除により相続税を計算するのでしょうか。
もし現在の相続税の基礎控除により相続税を計算するのであれば、私に相続税がかかってしまうのでしょうか。
【税理士長嶋の回答】
現在の相続税の基礎控除により相続税を計算するため、相続税が課税されます。
【回答解説:相続税は相続があったときの相続税法により計算する】
平成25年度税制改正により、相続税の基礎控除が次のように引き下げられました。
(改正前)
5000万円+1000万円×法定相続人の数
(改正後)
3000万円+600万円×法定相続人の数
この改正は、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。
平成27年1月1日以後に相続があった場合は、上記「改正後」の算式により相続税の基礎控除を計算することになります。
お父様の財産が相続時精算課税を利用したご実家のみの4000万円だとすると、3600万円の相続税の基礎控除を超える400万円に対して相続税が課税されることになります。
なお、相続時精算課税制度を利用したときに贈与税を払っていますので、相続税の申告をすることで既に払った贈与税の一部が戻ってくる可能性があります。
【回答解説:相続時精算課税制度を利用した土地には小規模宅地の特例は使えない】
相続した土地には、一定条件を満たすことで小規模宅地の特例が使える場合があります。
ご実家の場合は、330平方メートルまで80%減額できる制度となっていますので、相続税の対象となる財産が大幅に減ります。
この小規模宅地の特例が適用することができれば、相続税の基礎控除以下となるため、相続税はかかりません。
小規模宅地の特例の条件の一つに「相続又は遺贈により取得する財産」というものがあります。
相続時精算課税制度は、贈与により財産を取得しますので、相続又は遺贈により財産を取得したわけではありません。
つまり、相続時精算課税制度により取得した土地には小規模宅地の特例は使えないことになります。
【相続税申告Q&A参考ブログ】
・相続税の基礎控除改正は平成25年度税制改正へ先送り(2012.07.10)
・相続税基礎控除の改正による相続税の増税効果(2012.03.20)