【ご質問】
先日、父が亡くなりました。
父の相続財産は相続税の基礎控除を超えるため、相続税の申告が必要となりました。
今のところ、自分で相続税の申告書を作成しようと思っています。
相続人は、母と子供である兄と私です。
父と母、そして私は同居しておりました。
兄は結婚をしており、遠方にマイホームを購入して生活しております。
父(被相続人)が住んでいた土地には小規模宅地の特例があることを知りました。
このような私たちの家族構成ですが、小規模宅地の特例を適用することはできるのでしょうか?
【税理士長嶋の回答】
ご自宅の土地をお母様かご相談者様が相続すれば小規模宅地の特例を適用することができます。
もし、お兄様が相続をすることになれば小規模宅地の特例を適用することができません。
【小規模宅地の特例とは?】
相続人が相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の敷地として使われていた宅地又は被相続人等が住んでいた宅地で、一定の選択をしたものについて、土地の相続税評価額を減額するものです。
被相続人が住んでいた土地であれば、240平方メートルを上限に、土地の相続税評価額を8割引することができます。
【小規模宅地の特例の適用を受けるには条件が厳しくなった】
平成22年度税制改正により、小規模宅地の特例を適用することに制限がされることになりました。
この影響により、小規模宅地の特例の適用が受けられず、相続税の増税になる事例が多発しています。
現在、小規模宅地の特例で被相続人が住んでいた土地については、次の条件をクリアしなければなりません。
<被相続人が住んでいた土地を取得した相続人>
(1)被相続人の配偶者=お母様
(2)被相続人と同居していた親族=ご相談者様
(3)被相続人と同居していない親族=お兄様
<土地を取得した相続人の条件>
(1)お母様→特に条件はありません
(2)ご相談者様→相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に住んでおり、かつ、その宅地等を有していること
(3)お兄様→被相続人の配偶者又は相続開始の直前において被相続人と同居していた親族がいない場合に、被相続人の親族で、相続開始前3年以内に日本国内に自分の名義や配偶者の名義のマイホームに住んだことがなく、かつ、相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有していること
上記からわかることは、次のことです。
(1)お母様が土地を取得したとき
無条件に小規模宅地の特例を適用することができます。
(2)ご相談者様が土地を取得したとき
相続税の申告期限までに、ご実家でそのまま生活を続けていることを条件に、小規模宅地の特例を適用することができます。
(3)お兄様が土地を取得したとき
小規模宅地の特例を適用することはできません。
その理由は、お母様とご相談者様がおられるためです。
小規模宅地の特例は、配偶者やお父様と同居していた親族がいないことが条件となっています。
もし、配偶者やお父様と同居していた親族がいない場合でも、小規模宅地の特例を適用することはできません。
お兄様はマイホームをお持ちになって生活をされていますので、この条件もクリアできません。
【相続税は誰がどの財産を相続するかで変わる】
これらのことからわかることは、相続税は誰がその財産を相続するかで変わるということです。
相続税の節税を考えるのであれば、小規模宅地の特例の適用を受けることができるお母様かご相談者様がご自宅の土地を相続されるのが良いでしょう。
また、現実問題として、お母様やご相談者様は相続後の生活をどうするのかという問題があります。
生活する場所を確保するという意味でも、お母様やご相談者様が相続なさったほうが良いかもしれません。
そして、お兄様としても既にご自身のマイホームをお持ちですので、ご実家の土地を相続する意味があるのかどうかという問題もあります。
誰がどの財産を相続するのかということは、相続税の問題だけではなく、相続後のご家族の生活を考慮する必要があるのではないでしょうか。
【相続税申告Q&A参考ブログ】
・相続税の計算、土地評価は固定資産税評価額でするのですか?(2012.04.21)