【ご質問】
先日、父が亡くなりました。
相続人は、兄(会社員)と姉(会社員)、そして私(専業主婦)です。
父には多額の相続財産があり、相続税の申告が必要だと顧問の税理士さんに言われました。
父の財産の大半は土地なので、土地を売却しないと相続税を払うことができません。
顧問税理士さんから、土地を売却すると所得税がかかると言われました。
ここで長嶋さんに質問させてください。
以前知人から聞いた話なのですが、その知人も相続税の支払いのために土地を売却したところ扶養から外れたとのことです。
今、私は専業主婦なのですが、扶養から外れてしまうのでしょうか?
【税理士長嶋の回答】
扶養から外れてしまう可能性が高いと思います。
ただ、ここで「扶養」という言葉を使われていますが「所得税の扶養」と「社会保険の扶養」があり、両者はまったく意味が異なるので、区別して考えなければなりません。
【相続した土地を売却すると所得税がかかる可能性がある】
土地を売却したときは、相続で取得した土地であっても、所得税がかかります。
所得税は、簡単に次のように計算します。
(土地売却金額-土地購入金額)×税率=所得税
このとき、問題になるのは土地の購入金額です。
相続した土地の購入金額は、その土地を購入したときの購入金額をそのまま使います。
最近購入した土地であれば、売買契約書が残っている可能性があるため、購入金額はわかります。
ところが、戦前にその土地を購入していたときは、いくらで購入したかがわからないことがあります。
運よく購入金額がわかっている場合でも、貨幣価値が現在とはまったく異なるため、購入金額がとても安いことがあります。
このようなときは、土地の売却金額の5%を土地の購入金額にすることができます。
所得税がかかるのかどうかは、この土地の購入金額がいくらになるのか?が大きなポイントになります。
【所得税の扶養からは外れてしまう可能性があります】
ご相談者様は専業主婦とのことで、所得税を計算するときにはご主人の扶養に入っていると思います。
このとき、相続した土地を売却することで、所得が出る場合があります。
単純に、(土地売却金額-土地購入金額)が38万円を超えているときは、所得税の扶養から外れます。
【社会保険の扶養は外れません】
ご主人の扶養に入っているといっても、所得税だけではありません。
ご主人の会社の社会保険の扶養にも入っているのではないでしょうか。
このとき、相続した土地を売却して所得があったとしても、社会保険の扶養からは外れません。
社会保険の収入は「継続した収入が基準額を超えるかどうか」という考え方をしています。
例えば、相続した土地が駐車場に使われていて駐車場収入(不動産所得)が継続的にある場合などは、継続した収入ですので基準額を超えているかどうか判断されます。
しかしながら、不動産の売却による収入は、継続的なものではなく突発的なものであり、社会保険では収入とは見ませんので扶養から外れることはありません。
【相続税申告Q&A参考ブログ】
・相続する不動産の所得税は誰が払うのでしょうか?(2012.04.08)